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Mt Joyロードレース 優勝 レースレポート

今更ですが、レースレポートをアップします。

2008年4月12日 Mount Joy ロードレース 

参戦カテゴリ:Master 40+

数日前の天気予報では当日は雷雨で降水確率70%。雨のレースを半分覚悟してエントリーする。レース開催日に近くなるにつれ、天気予報も段々と良くなってくる。これならもしかしたら雨は降らないかも、と、Bikeは今シーズン新しく買ったチームBikeのRidleyエクスカリバーを選択する。
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このエクスカリバーはフレームがモノコックカーボンで出来ており、フレーム重量が1150g(フォーク除く)と決して軽量フレームでは無いが、その剛性の高さは今まで自分が所有したレースBikeの中では一番である。その剛性の高さ故か、加速が鋭く、ペダリングパワーが推進力に効率よく変換されているように思える。クランクはDura Aceの53/39からFSAのコンパクトドライブSLK50/34に変更し、クランク長も175mm→170mmにした。リヤカセットは12/23Tを装着してある。このMount JoyロードレースはMtと名前が付いているが決して”山岳”レースではない。地名がMount Joyなのでレース名もMout Joyなだけだ。何故山が無いのにMountが付いているのか気になるが・・・

さて、このコースはペンシルベニアの地形によくあるローリングHill(アップダウンの連続)で、一箇所激坂がある。激坂では34/23Tでケイデンス90rpmくらいでレースペースになるくらいの急登だ。今年でのこレースを走るのは3回目だが、毎年激坂ではインナーロー(39T)の25Tで心拍急上昇する。

レース当日は予報よりも好転し、曇りベースながらも時々青空が覗く空模様となった。
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前夜の雷雨の影響で路面はウェットで未だ朝の霧が残っていた。しかしレース開始時刻が近づくにつれ、霧も晴れてきた。
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ローラで20分ほど軽くアップし、スタート10分前にコースインスペクションに出る。チェックするのはどこからゴールスプリントをかけるかだ。ゴール前1Kmからゴール手間150mくらいまでは緩い登りになっていて、ゴール前150mは緩やかな下りとなっている。去年は最後まで優勝に絡む位置でゴール手間まで来たが、スプリントをかけるタイミングが早すぎてゴール手前で失速して4位になった苦い経験があるので、今回はスプリント開始は登りが終わった後の下りが始まるやや手前と決めた。レース前の目標は「リスクを恐れずアタックをかける。あるいは逃げがあれば苦しくても追う。それで結果がダメでも何もやらないでゴールするよりずっとマシ」である。これは自分の今シーズンのテーマである。
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スタートラインには30人程の選手が並ぶ。エリートクラスのCat2選手達も居る。スタート前にアメリカ合衆国の国歌が流れる。アメリカ人選手の多くは国歌斉唱の際はヘルメットを取り、右手を胸に当てて厳粛な面持ちだ。日本人である自分は国歌に敬意を表するが、右手は胸に当てない。

国歌斉唱後スタートのカウントダウン。スタートホイッスルと共にスタート。ペダルは一発で入った。まずは先頭から10番手くらいをキープする。スタート直後のコーナーを曲がって登りに差し掛かると、心拍が上がり、呼吸が少し荒くなるのを感じる。ちょっとマズイなぁ・・・なんて思いながらも徐々に呼吸も落ち着き、平常に戻った。1周目の中盤で早くも動きが活発化し始めた。Tri State VeloのKevinが加速し、集団を引き始めた。なかなか良い動きだったので集団は分断したかと思ったが、皆付いてきたようだ。Kevinは何回もしきりに後ろを振り返りながら先頭を引いている。何でそんなに後ろを見るのか?一回見れば皆付いて来ているのが分かるだろうに。
やがてペースは落ち着き、2周目に入る。
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2周目中盤より少し手前の下り坂でSpinners CycleのKen Wilsonが猛然とアタックを仕掛けた。キレのあるアタックで一気に集団を置いていく。KenはCat2選手で目下のところポイントリーダーである強い選手だ。自分は「このアタックは決まるかも」と感じたのか、迷うというよりも判断に少し時間をかけて追う事にした。逃げるKenとの距離は少し開いていたが、自分では追いつけると感じていた。後ろを振り返ると誰も追ってこない。こうなったら絶対にKenを捕まえると決め追いかける。少しして審判のBikeが横から猛スピードで自分を抜き、Kenの横に並んで何か言っている。程なくしてKenに追いつこうとする頃、ようやく何で審判がKenに走り寄った分かった。Kenがアタックをかけた際、道路の黄色車線をはみ出して行ったのを警告したのだ。審判はKenに一旦集団に戻るように指示したらしい。せっかくKenに追いつき、2人で逃げを試みるつもりが、相棒が居なくなってしまった。ちょっとこれは想定外の展開になった。ここまで来た以上、自分独りでも逃げてやると思いペダルを踏み続けた。やがて目の前には最初の急登がせまった。50TX23Tにシフトし、アウターのままケイデンスを上げて登る。坂の頂上に来た時後続を確認する。人数は定かでは無いが急坂の登り口に差し掛かっていた。その後に続く下りを使って後続との距離を離す事にした。確かFunrideか何かに「逃げる時は登りでペースをセーブして下りで引き離すのが効率的」と書いてあったのを思い出した。審判Bikeからは後続との差は15秒と聞かされる。そして最大の急坂に差し掛かる頃、後ろから追いついてくる気配を感じた。さっきのKen Wilsonだ。やっぱり強いなぁ。でもこれで2人になった。二人で逃げを決めるべく協力が始まった。
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独りで逃げるのと2人で逃げるのとでは大きな違いだ。Kenと自分で先頭交代を繰り返し、出来るだけハイペースを維持しながら進む。2人しか居ないので先頭交代は短めにそしてスムース行う事にする。風の方向を計算し、先頭交代を左から行うのか、右から行うのかを変えていく。3周目に入る。2人で先頭交代を頻繁に繰り返し、お互いの消耗を抑えつつもペースを上げ、後続との差を広げるべく頑張る。
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3周目半ばで追走との差は30秒と知らされる。あとで知った事だが、3周目に入ったばかりの時点では追走集団は視界に入る位置で追ってきていたらしい。30秒の差は油断すれば詰められる距離だ。後ろが気になるが、振り返ってもし後続が視界に入ればプレッシャーがかかると思い、敢て見ないようにした。その代わりペダリングに集中し、維持できる最大速度で逃げ続ける。脚の方も激坂では相変わらず34x23tを必要とし、呼吸も荒くなるが乳酸の除去が上手く行っているのか比較的良く回る。脚に乳酸が溜まり始めても少しリカバリを心がけると直ぐに復活するのを感じながら走る。今シーズンはオフトレで例年の倍の量(距離)を走ってきたし、強化トレーニングではVO2max強度でのパワーを意識したトレーニングを重ねて来たお陰だろうか。4周目に入った。2人は淡々とペースを維持走り続ける。毎周回とも大体同じようなタイミングで先頭交代を繰り返すのに気が付いた。風も出てきて、向かい風が強くなる。苦しいがここでペダリングを緩める訳には行かない。向かい風が強くなることで追走グループのペースが落ちる事を願った。過去の経験上、向かい風が強くなると追走集団の意思統一が出来ていないとお互いに様子見を始めてペースが落ちるものだ。逃げる我々はペースは緩めない。
4周目でも追走との差は30秒。少なくとも差は詰められていないが相変わらず油断できない。
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いよいよ最終周を迎えた。ベルラップだ。ベルが鳴り歓声が聞こえる。自分のレースに毎週付き添ってくれる家族(妻と2人の子供)からの大きな声援も確かに受け取った。身が引き締まる。この時点で未だ勝負に拘りは無かった。ここまで逃げ続けられて良かったという安堵感と、この周回で終わりだという区切りが見えて後はこのまま行くだけだというシンプルな気持ちだった。最終周に入った時点で追走との差は1分だったらしい。淡々と先頭交代を繰り返し、最後の激坂も無事に越えた。正直言ってこの激坂が一番苦しかった。あとはゴールを目指すだけだ。ラスト1Kmになり後ろを振り返る。視界に誰も入らない。少なくともKenか自分が1位か2位になることを確信した。Kenから「これで決まったな」という意味の握手を差し出される。自分も手を差し伸べ握手する。何とも充実した気持ちだ。
未だ自分には勝敗への意識は無い。最後の1Kmから200mまではKenと談笑さえしながらゴールを目指した。お互いに横一線に並びお互いを風除けに使う事は自然と無くなった。ゴール前200mのサインを横切った。もうお互いに無言だ。ペースは次第に上がって行く。でも横一線にならんだままだ。いつでも急加速出来るように1段ギヤを軽くした。最後の登りを越えると眼下にはゴールテントが見えた。今度は1段ギヤを重くし自分で決めていたスプリント開始ポイントよりやや早めにダンシングに切り替えてアタックを始めた。考えるより先に体がそのように反応してしまった感じだ。ちょっと早かったかな?と一瞬思ったが後は一気にゴールを目指すだけだ。
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一瞬左脇下から後ろを確認するとKenはやや後方に位置していた。下ハンドルを握り締めシッティングのままシフトを重ね最大ギヤ50X12Tでとにかくがむしゃらにペダルを回した。この時初めて勝負を意識した。自分の前には誰も居ない。もう直ぐゴールだ。
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視界が狭くなり自分の前一線しか見えない。脚はどんどん回るし、呼吸やら脚の乳酸やらは全く感じない。今までに無い感覚だ。とにかくどんどんパワーが増す感覚だった。とうとうゴールラインを切った。
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やった優勝だ!!Mastersで参戦して3シーズン目にしてMasters40のカテゴリで初優勝した。アメリカでレースを初めてから3回目の優勝。
何とも言えない充足感と安堵感が広がっていく。勝負を争ったKenからも他チーム選手達からも祝福の言葉を頂いた。嬉しかった。そしてゴール後に家族と対面した時の妻や子供の嬉しそうな顔が心に刻まれた。家族の理解とサポートのお陰で自分は日々のトレーニングをこなせるし、レースにも参戦出来ている。有難う。妻からもらった言葉「普段の練習が報われたね」は素直に自分の心に染み渡った。次はいつこんなチャンスが訪れるか分からないが、いつか又こんなチャンスが来る事を願ってこれからも地道に練習を続けていく。

優勝賞金を受け取って帰路に着く
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Commented by NORI at 2008-04-18 06:39 x
はじめまして。
思わずコメントさせていただきます。
臨場感あふれるレースの記事を息を飲みながら読ませていただきました。
優勝ってスゴいですね!おめでとうございます。
僕は1年満たない、にわかピスト&ロード乗りです。
いろんな海外の自転車ブログやサイトを見ていたりすると、自転車乗りの層の厚さに驚かされます。
レースというものに少し興味を持ってきました。
日本にもあるのかな?
また、立ち寄らせていただきます。
Commented by 貧脚サブ at 2008-04-18 08:38 x
おはようございます。
レースレポ読ませて頂きました、詳しく書かれているので良く伝わってきます。
写真も綺麗なのでレースの雰囲気が分かりますね。
これだけの選手がいる中での優勝はすごいです。
Commented by Sprockets at 2008-04-18 11:15 x
Noriさん;
コメント有難うございました。私も昨年はトレーニングとしてピストに乗りました。ピストって面白いですよね。レース、病み付きになりますよ。日本でも勿論レースは一杯ありますよ。ヒルクライムレースからJCRC、実業団のロードレースまで。ただ、レースの数は日本はアメリカに比べて圧倒的に少ないです。私の住んでいる州だけでも年間90レース以上開催されます。毎週末どこかのレースに出る状態が9月末まで続きます。またお越しくださいませ。
Commented by Sprockets at 2008-04-18 11:20 x
サブリーダーさん;
おはようございます。拙いレポート読んで頂き有難うございました。時にはこんな良い事もあるのでレースは止められませんよね。
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by sprockets | 2008-04-18 05:26 | レース | Trackback | Comments(4)

アメリカ東部、ペンシルベニア州に住んでいます。我が家のファミリースポーツであるサイクリングやRVキャンプの記事がメインです。


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